My Funny Valentine マイ・ファニー・ヴァレンタイン

今月の朝日カルチャーセンター講座の課題曲はMy Funny Valentineです。Rogers & Hartの名コンビの手による、まさにスタンダード中のスタンダートともいえる曲ですが、講座足掛け6年目にしてようやく取り上げることにしました。こういうシンプルなメロディで、誰でも知っている大スタンダードこそが、歌うのが一番難しい曲であり、また料理する側のセンスが問われる曲でもあります。
この曲にはユニークなヴァースがあります。ヴァースつきのものとコーラスのみの2パターンの歌唱をmyspaceの方に追加いたしました。
http://www.myspace.com/maricoi
このヴァース、「Thou(二人称単数主格=you)」とか「Thy(二人称単数属格=your)」なんて単語が使われていて、シェイクスピアのかおりです。ひさびさに大学時代のOE(古英語)の教科書をひっぱりだしてしまいました。この当時作詞家のハートはわざと古い言葉で書くのがマイブームだったらしく、そういえば「Thou Swell」もそうですよね。
もともとは1937年のミッチ・グリーン主演のミュージカル「Babes in Arms」の中の曲。「私の可愛い滑稽なバレンタイン」は、バレンタインディのことではなく、劇中に出てくる「Val」というさえない男の子のこと。主役のミッチがそのボーイフレンドへの思いを歌ったものだそうです。
このミュージカル自体は低予算で作られ、それほどヒットはしなかったものの、現在に残るスタンダードをたくさん輩出した作品です。この「My Funny Valentine」をはじめ、「Where or When」 「 Wish I Were In Love Again」「Johnny One Note」「The Lady Is A Tramp」は全てこのミュージカルの劇中歌だとか。のちにこのミュージカルはジュディ・ガーランド主演で映画化もされていますが、このとき「My Funny Valentine」は使用されていません。その理由としては、男の子の役名がValではなく、Mickyであったから、発売当時この歌があまり話題になっていなかった(実際、1940年代の録音はほとんどなく、ハル・マッキンタイヤ楽団のダンス曲アレンジが一度ヒットチャートに入ったのみ。当時のロジャース&ハート作品集にも収録されていなかったそうです)、また一説にはこの映画の音楽プロデューサーであるアーサー・フリードが前作のミュージカルの曲のできばえに嫉妬して、かわりに自分の曲をたくさん入れるようにしたという話もあるそうです。
そんなわけで、あやうく忘れられかけていたこの曲を現在の大スタンダードにした功労者はシナトラとチェットベイカーでしょうか。シナトラは1955年のアルバム「Song for Lovers」に収録し、評判となりました。チェットの方は実はシナトラよりも少し早く、1952年のアルバム「My Funny Valentine」でヒットさせています。このときチェットがヴァースを歌わず、コーラス部分から歌い出したのが、後のカバーでもヴァースがカットされるようになったきっかけかもしれません。確かにヴァースの歌詞を見ると、「dopey gent」と相手が男性であることを特定してしまう言葉がでてきますので、男性が歌うにはちょっと抵抗があったのかな。ましてや中性的な声のチェットがここを歌ったらちょっとシャレにならんかもしれませんww
最近は結構ヴァースをとりあげる人を見かけるようになりました。そして現代のチェットといえなくもない(こっちはカミングアウトしてますが)ルーファス・ウェインライトがヴァースから歌ってます。技巧的にはジャズとはいえないですが、味があっていいですねえ。
あとヴァースを歌ったヴァージョンとして最初に思いつくのはエラです。ロジャース&ハートソングブックに入ってます。
ロジャース&ハート・ソング・ブック
あとはやっぱり私の世代ですと、ミッシェル・ファイファーですねー。「Fabulous Baker Boys(恋のゆくえ)」のあの最後のシーン。イケメンwだったころのジェフ・ブリッジズとお別れするラストシーンでかかるマイファニーヴァレンタイン。当時はこれこそ決定版マイファニーだと思って、サントラを激リピートしてました。ていうかミッシェルファイファーこんなに歌えるのね!と度肝を抜かれました。他にも「More than you know」とかもヘタな歌手よりずっと雰囲気あるし、よかったです。あの映画、全体にデイヴ・グルーシンのアレンジがかっこよすぎです。ミッシェルファイファーも一番油がのっててきれいなときだったと思うなあ。「Hair Spray」とかのいじわる役も大好きでしたけど。ちなみにマイスペに入ってるヴァースなしの私の歌はミッシェルリスペクトつうかインスパイアというか盛大にパクってますね(笑)まあオケ自体があのヴァージョンのものだし、聴く人が聴いたらすぐバレると思いますが…。好きだからしょうがない。
訳 by marico
ヴァース
ご覧 きちんと着飾り
人徳あふれた誇らしげなその姿
しかし汝は知らぬであろう? 愚か者よ
自らがどんな風に見えるかを
汝の薄い眉、乱れた髪が
よき所を帳消しにしてしまう
気高く、品行方正、正直者で誠実
しかしながら 少々まぬけな紳士よ…
私のおかしなヴァレンタイン
かわいく滑稽なヴァレンタイン
あなたを見ると心から微笑んでしまう
あなたは見るからに三枚目、写真映りも良くない
だけどあなたは私のお気に入りの芸術品なの
あなたの容姿はギリシャ彫刻には及ばない
口元もなんだかしまらない
おしゃべりもとてもスマートとは言えないわ
だけど髪の毛一本だって変えちゃ駄目
私を愛してるなら絶対にね
ずっとそのままでいて、愛しいヴァレンタイン、私と一緒に
そうしたら毎日がバレンタインディなのよ
もともとは1937年のミッチ・グリーン主演のミュージカル「Babes in Arms」の中の曲。「私の可愛い滑稽なバレンタイン」は、バレンタインディのことではなく、劇中に出てくる「Val」というさえない男の子のこと。主役のミッチがそのボーイフレンドへの思いを歌ったものだそうです。
このミュージカル自体は低予算で作られ、それほどヒットはしなかったものの、現在に残るスタンダードをたくさん輩出した作品です。この「My Funny Valentine」をはじめ、「Where or When」 「 Wish I Were In Love Again」「Johnny One Note」「The Lady Is A Tramp」は全てこのミュージカルの劇中歌だとか。のちにこのミュージカルはジュディ・ガーランド主演で映画化もされていますが、このとき「My Funny Valentine」は使用されていません。その理由としては、男の子の役名がValではなく、Mickyであったから、発売当時この歌があまり話題になっていなかった(実際、1940年代の録音はほとんどなく、ハル・マッキンタイヤ楽団のダンス曲アレンジが一度ヒットチャートに入ったのみ。当時のロジャース&ハート作品集にも収録されていなかったそうです)、また一説にはこの映画の音楽プロデューサーであるアーサー・フリードが前作のミュージカルの曲のできばえに嫉妬して、かわりに自分の曲をたくさん入れるようにしたという話もあるそうです。
そんなわけで、あやうく忘れられかけていたこの曲を現在の大スタンダードにした功労者はシナトラとチェットベイカーでしょうか。シナトラは1955年のアルバム「Song for Lovers」に収録し、評判となりました。チェットの方は実はシナトラよりも少し早く、1952年のアルバム「My Funny Valentine」でヒットさせています。このときチェットがヴァースを歌わず、コーラス部分から歌い出したのが、後のカバーでもヴァースがカットされるようになったきっかけかもしれません。確かにヴァースの歌詞を見ると、「dopey gent」と相手が男性であることを特定してしまう言葉がでてきますので、男性が歌うにはちょっと抵抗があったのかな。ましてや中性的な声のチェットがここを歌ったらちょっとシャレにならんかもしれませんww
最近は結構ヴァースをとりあげる人を見かけるようになりました。そして現代のチェットといえなくもない(こっちはカミングアウトしてますが)ルーファス・ウェインライトがヴァースから歌ってます。技巧的にはジャズとはいえないですが、味があっていいですねえ。
あとヴァースを歌ったヴァージョンとして最初に思いつくのはエラです。ロジャース&ハートソングブックに入ってます。
ロジャース&ハート・ソング・ブック
あとはやっぱり私の世代ですと、ミッシェル・ファイファーですねー。「Fabulous Baker Boys(恋のゆくえ)」のあの最後のシーン。イケメンwだったころのジェフ・ブリッジズとお別れするラストシーンでかかるマイファニーヴァレンタイン。当時はこれこそ決定版マイファニーだと思って、サントラを激リピートしてました。ていうかミッシェルファイファーこんなに歌えるのね!と度肝を抜かれました。他にも「More than you know」とかもヘタな歌手よりずっと雰囲気あるし、よかったです。あの映画、全体にデイヴ・グルーシンのアレンジがかっこよすぎです。ミッシェルファイファーも一番油がのっててきれいなときだったと思うなあ。「Hair Spray」とかのいじわる役も大好きでしたけど。ちなみにマイスペに入ってるヴァースなしの私の歌はミッシェルリスペクトつうかインスパイアというか盛大にパクってますね(笑)まあオケ自体があのヴァージョンのものだし、聴く人が聴いたらすぐバレると思いますが…。好きだからしょうがない。
訳 by marico
ヴァース
ご覧 きちんと着飾り
人徳あふれた誇らしげなその姿
しかし汝は知らぬであろう? 愚か者よ
自らがどんな風に見えるかを
汝の薄い眉、乱れた髪が
よき所を帳消しにしてしまう
気高く、品行方正、正直者で誠実
しかしながら 少々まぬけな紳士よ…
私のおかしなヴァレンタイン
かわいく滑稽なヴァレンタイン
あなたを見ると心から微笑んでしまう
あなたは見るからに三枚目、写真映りも良くない
だけどあなたは私のお気に入りの芸術品なの
あなたの容姿はギリシャ彫刻には及ばない
口元もなんだかしまらない
おしゃべりもとてもスマートとは言えないわ
だけど髪の毛一本だって変えちゃ駄目
私を愛してるなら絶対にね
ずっとそのままでいて、愛しいヴァレンタイン、私と一緒に
そうしたら毎日がバレンタインディなのよ
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