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名古屋市中区でボーカルレッスン

スタンダードよもやま話

I've Got You Under My Skin-あなたはしっかり私のもの

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Cole Porter

日本語訳(by marico)
私の内にあなたがいる
私の心の奥底にしっかりすみついてしまったあなた
思いがあまりに深くて、もう私の一部みたいになってしまった
私の心に入り込んでしまったあなた

もちろん必死で抵抗したわよ
「こんな恋がうまくいくわけがない」って自分に言い聞かせもした
でもどうして抗うことができる?
こんなによくわかってるのに
あなたが私の中にいることを

あなたと一緒にいられるなら
何だって犠牲にするわ
でも夜になると耳のそばで
何度も何度もこんな警告が聞こえるの
「ばかだなあ、君には無理な恋だよ
頭をひやして 現実を見てごらん」

でもあきらめようと思っても
あなたを思うだけで
また恋に引き戻されてしまう
だってあなたは私の一部になってしまったから

つづく↓
邦題の「あなたはしっかり私のもの」。「すっかり」じゃなくて、「しっかり」なところがミソなんでしょうか?邦題のタイトルをちょっとだけ見た印象だと、あなたをモノにしちゃったのかな?という印象ですが、内容を読むとまったくその逆でかなわない恋に悩んでうずうずしている人の歌です。
1936年のMGMミュージカル映画「踊るアメリカ艦隊」(原題:Born to Dance)のために作られたナンバー。コール・ポーターの作詞・作曲です。それでさっきのタイトルの話に戻りますが、「I've Got You Under My Skin」というのもまさにひねりの人、コール・ポーターらしい表現ですよね。直訳すれば「あなたが私の皮膚の下にいる」皮下脂肪?皮下注射?なんじゃそれはという感じですが、もともと「You get under my skin」という慣用句は、まるで皮膚の下に入り込んでしまったように「いらいらさせる」というもどかしい気持ちの表現です。また一方、英語では誰かを好きになるという感情を「むずがゆさ」という皮膚感覚でとらえる発想があり、「itch for you(あなたが好きでたまらない)」と「むずがゆい」の意味の「itch」を使うことがあります。つまり、表面的な「好き」ではなく、あなたが心の奥まで入りこんでしまった、ちょっとむずむずする歯がゆい気持ちと理解するのが一番近いのではないでしょうか?
まあもう1つは明らかにちょっと意味深なタイトルでもありますよね。(以下自主規制)そういうところもポーターらしいというかなんというか。

この曲制作の前年から拠点をブロードウェイからハリウッドに移し、それまでの舞台から映画向けの仕事にシフトしていたポーター。この映画はもう1つ、のちにスタンダートとなる「Easy to Love」も生みだしています。

当時のミュージカル曲としては珍しくヴァースがありません。あと、全体が56小節あるのも当時のスタンダードとしては珍しいのではないでしょうか。ただ、コード進行だけ聞くとけっこうワンパターンというか、「ずっと同じやん」と感じるかと思います。弾き語りする私としては楽ですがwそのあたりについては、土井一郎氏のすばらしいブログ(これほんとタダで読んでいいのというくらいです。本にしてほしい)にも記述がありますので、ご覧になってみてください。
I've Got You Under My Skin3

ヴォーカルものとしてはやはりまずシナトラをあげざるを得ません。シナトラにあて書きしたような曲じゃないかといわれるくらいです。私自身が最初にこの曲を聞いたのはダイナ・ワシントンでした。例の名盤Dinah Jamsのアルバムです。曲から立ち上る熱い湯気のような熱気にあてられます。獣のセッションに鳥肌です。肉食系というか。その他ちょっと新しめだとダイアナ・クラールのボサノヴァのけだるいアレンジも人気ですよね。

人気のスタンダードなので、その他にもいろいろな人が歌ってますが、いろいろ聞いても意外と「これはいい!」というのが少ないような気もします。どっちかというと楽器の方が名演が多いような…。
しかしようつべで見た、人もうらやむデップの彼女、ヴァネッサ・パラディとアラン・ランティの競演がなかなかよかったです。職人芸のようなうまさより、実はこういう楽しげで気楽な感じこそがポーターらしさなのかもしれません。ただうまけりゃいいってもんじゃないといういい例ですね。こういう肩の力の抜けたウフフな味を出してみたいもんです。それにしても10年前らしいけど、やっぱりかわいいなあ。シャネルの小鳥やってた頃のヴァネッサが一番好きですけど…。フランス人にしては英語も上手だしね。



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肉食わないとこういう歌は歌えないかも。スシ民族には難しいのかー??


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